幾百年かの昔、下瀬加の鬼谷(おんだに)付近は人家が一軒もなく、小笹が生い茂っていました。
ここは、篠間が原と呼ばれ、狐や狸の住処となっていたそうです。
ある日、下瀬加御舟の佐次兵衛さんがここを通りかかると一匹の白狐を見つけました。白狐は水たまりの中から
青い藻を引き上げて頭に乗せたかと思うと、二十歳ばかりの美しい娘に化けました。
そして、土饅頭をお餅に変え、重箱に詰めて歩きだしました。
佐次兵衛さんがあとをつけると、白狐は田中の仁兵衛さんの家へ入っていき、そこの娘に成りすましていました。
そうとは知らない仁兵衛さんは、娘に化けた狐が持ってきた土饅頭のお餅を、嬉しそうに食べていたそうです。
【ぶらり市川散歩道 114ページ 篠間が原の狐】
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